日本創成会議の移住提言から学ぶ
東京から地方への移住提言
報道によりますと、民間有識者でつくる日本創成会議は一都三県で高齢化が急速に進むため、北海道から九州・沖縄まで41地域を介護施設などが充実しているとして、高齢者に移住を促すべきだと提言しました。
これに対して、東京都知事が「乱暴な議論」とコメントして話題となっています。
移住は現実的か?
今まで一都三県で生活していたのに、介護施設がないことを理由に「さあ、移住しよう」とはいきません。
生活環境が劇的に変化しますし、新たなコミュニティに参加しないと知り合いもいませんので寂しい生活となってしまいます。
また、居住地域の選択は個々人の自由ですので、政府に言われたからといって介護施設の充実した地域に移住させる強制力は当然ありません。
一方、一都三県の高齢化は一都三県のみで解決できる問題ではありませんので、日本全体で解決しなければならない問題であるのも事実です。東京圏で介護施設を容易に増やすことができない以上、移住に期待せざるを得ない面もあります。
したがって、今回の提言は介護に関する議論を活性化させた点で評価できます。
そして、移住は現実的かというと、東京圏で介護施設が不足してしまう以上、結果として移住する人が増えてくると思われます。
移住できる人は、一定の資産を持ち、故郷等、縁のある地域の介護施設が充実している等の条件を満たす必要があると思います。
もしかしたら、敏感な人は今回の提言を受けて、「移住」に関する情報収集を集めた方もいるかもしれませんね。
それでも一都三県の介護施設は不足しますので、勝手な憶測ですが、首都圏でカバーすることになるのではないでしょうか。
高齢化社会を見据えて
今回の介護施設不足のようなニュースはますます増えていくでしょう。
人の流れが変わると経済の流れ・消費の流れが変わります。
地方自治体の中には「移住先」として他の自治体との差別化を図るところも出てくるでしょう。
移住する方は健康なうちに移住しますので、「健康寿命」を長く延ばせる生活環境が望ましいです。
そのため、介護施設に限らず、身体を動かすスポーツ施設やゴルフ場、コミュニティ形成のためのレクリエーション施設など、アクティブシニアの需要が拡大します。
需要が拡大しますと、その需要に見合った供給を確保するため地域に雇用が生まれますので、若者を惹きつける地域となる可能性があります。
まあ、口で言うのは簡単ですが、若者の雇用を生み出すことが生活の安定をもたらし、少子化の改善にも寄与すると考えられます。
中小企業の経営に及ぼす影響は
日本の問題として介護を取り上げると、規模の大きな話で会社経営とは遠い話のように思えてしまいますが、介護施設が不足しているため、在宅介護を選択する人も増えてくるでしょう。
そうしますと、従業員が親の介護を理由に休業したり退職したりするケースも出てきます。
中小企業にとって、従業員一人ひとりは貴重な戦力ですので、親の介護を理由に会社を離れてしまうのは非常に残念なことです。
また、現役世代は晩婚化が進んでいるため、親の介護と子育てを同時に行わなければならない人もいることでしょう。
介護をしながら・子育てをしながらでも働ける職場環境、若しくは介護が落ち着いた後に職場に復帰できる環境を整備することが優秀な従業員を惹きつける要素となると考えますので、知恵を絞って、他社との差別化を図りましょう。