安保法案、強行採決から学ぶ
安保法案、強行採決
本日、安全保障関連法案が、衆議院平和安全法制特別委員会で可決されました。
ニュース映像では、裁決に反対する野党議員が「強行採決反対!!」などと記載した紙を掲げ、浜田委員長を取り囲んで、怒号が飛び交う中、可決されている様子が流されました。
安保法案の内容について、皆様それぞれに意見があると思います。
ここでは、法案の是非についてではなく、物事を決めるプロセスについて考えていきます。
国会の決議と会社の意思決定の仕組み
国会における決議は出席議員の過半数の賛成により行われます。
そのため、与党が過半数の議席を確保していれば、基本的に与党の法案が成立します。
一方、会社の意思決定の仕組みは取締役会及び株主総会で決議されます。
取締役会では重要な業務執行の決定を基本的に出席した取締役の過半数(頭数)で意思決定を行います。
また、会社にとって最も重要な事項は株主総会における意思決定が必要です。株主総会では普通決議(過半数)、特別決議(3分の2以上)及び特殊決議(4分の3以上)といった決議の種類がありますが、いずれも議決権の数の多寡によって決まります。
株式会社であれば、各株主の保有する株式数に応じて議決権の数が決まるわけです。
そのため、頭数ではなく、多くの株式数を保有している株主の意見が会社の意思決定となります。
今年のニュースを例にとりますと、大塚家具の経営方針に関する父と娘の対立で、それぞれの陣営が株主を囲い込んでいたのも、頭数ではなく株式数が重要だからです。
多数決は正しい意思決定か?
会社の最高意思決定機関である株主総会は多数決原理により意思決定を行います。
そのため、過半数の株式数を持つ株主は他の株主から反対意見があっても、自らの意見を会社の意思決定とすることが可能です。
オーナー経営者の多い中小企業においては、代表取締役が過半数やそれ以上の株式数を保有しているケースが多いと思います。
経営者がオーナーとして会社を支配しますと、「自分の会社」として思うが儘にスピーディーに意思決定できます。
いわゆるワンマン経営が可能となります。
ワンマン経営は必ずしも良くないものというわけではありません。
ただ、注意点として、多くの株式数を持っているからといって、株主総会の決議が難なく通るからといって、会社にとって正しい意思決定をしているとは限らないということです。
カリスマ経営者で、どのような局面でも必ず正しい答えを導き出せるのならば、その経営者の判断に依存してもその局面では問題ないのかもしれません。
しかし、人は誰でも判断を誤ることがありますし、思い込みや見落としなども起こしてしまいます。
そのような一個人のミスを防ぐために、会議体で議論することで、できるだけ最適な意思決定を導くのです。
経営者に忌憚なく意見を言える人がいますか?
先述したとおり、オーナー経営者は自分の思い通りに会社の意思決定を行うことが可能です。
トップダウンで意思決定し、部下に指示を出し、現場の社員がその指示に従い行動することは、組織として必要なことです。
しかしながら、会社の意思決定がいつも社長の独断で決まるとしたら、他の社員は自分の頭を使って会社のことを考えて、社長に対してあまり意見を言わなくなってしまいます。
だって、どんなに意見を言っても、最終的には社長の独断で全てが決まってしまうのですから。
そして、時が経ち、社長が高齢化して後継者を社内に探してみると、指示待ち社員ばかりで、経営者の視点で会社全体のことを考える人がいないことに気付くと思います。
この状態から後継者候補を探し、イチから育成していくことは非常に困難です。
つまり、日々の経営意思決定に社員を関与させることは後継者育成にも良い影響を及ぼすのです。
それでは具体的にどうするのかと申しますと、経営者に忌憚なく意見のいえる風通しの良い雰囲気を作り、社員とのコミュニケーションを活性化し、現場社員のアイデアを採用したり、幹部社員に大幅に権限移譲したりすることが考えられます。
そのような社風を作るには時間を要しますので、今から実行し、継続しなければなりません。