マイナンバーを活用した消費税軽減に学ぶ
酒を除くすべての飲料食品の軽減税率にマイナンバーを活用?
報道によりますと、政府は2017年4月に消費税率が10%に引き上げるのに合わせて、酒を除くすべての飲料食品の軽減税率の骨格をまとめました。
その軽減税率の骨格の特徴はマイナンバーの仕組みを活用していることです。
具体的には、まず、買い物時にマイナンバーカードを用いて10%の消費税を支払います。
次に、マイナンバーカードから収集した購買情報と納税者の所得情報をマイナンバーシステムで照合します。
最後に、納税者が年末調整や確定申告を行うことにより軽減税率分を還付します。
色々な課題を考えてみる
まず、このニュースを耳にした国民の多くはプライバシーが侵害されるようで嫌だなと思うのではないでしょうか。
自分が行きつけの店の会員カードで購買履歴が管理されることは、会員登録の際に同意しています。
また、お店の品揃えが顧客好みのものになったり、ポイントが貯まることによる会員サービスなどのメリットがあったりしますので、広く受け入れられていると思います。
一方、マイナンバーについては、国民一人ひとりが購買情報の利用に同意することなく、国会で法律が制定されることによりどんどん決まっていきますし、国民のメリットよりも税金を徴収する側のメリットが過度に優先されている印象を受けてしまいます。
多くの国民がクレジットカードやポイントカードを持っているため、マイナンバーカードを用いた購買情報の収集も受け入れられると政府は考えたのかもしれません。
しかし、民間のカード会社やポイントカード発行会社での情報漏えい事故も発生していますし、日本年金機構の情報漏えい事故の記憶が新しい中、まずは年金データの管理体制を改善し、国民の信頼を得てからではないでしょうか。
また、軽減税率分は還付請求しなければならないため、1年間分の軽減税率は先払いですし、還付請求を行わない限り、軽減税率の効果を国民は得られません。還付請求をし忘れた、あるいはできなかった国民は、自動的に税金を納め過ぎになるのでしょうか。
国民の利便性がどこかに置き去りにされている気がします。
さらに、マイナンバーカードを用いて買い物をするといっても、現在、POSレジを導入していない中小の小売店も対応しないといけないのでしょうか。
この前、5%から8%に切り替えたばかりの価格表示を10%に切り替えることだけでも大変ですし、10%増税時に買い控えが起きることも懸念されるなか、マイナンバーカードに対応した設備投資が義務付けられるのでしょうか。
色々な疑問が湧いてきます。
新しいことを行う時に課題はつきもの
消費税軽減にマイナンバーを活用することについては、皆様にも色々な意見があるかと思います。
本件の是非についてはともかく、何か新しいことを行う時に課題はつきものだということに改めて気付かされます。
新しいことを行う発案者にとっては、何らかのメリットを得ることを目的としています。
一方、その新しいことを行うに際して出てくる課題は、誰かが何らかのデメリットを被ってしまうことを意味します。
その課題にどう向き合い、解決するのかが、発案者の腕の見せ所です。
そもそも課題のないアイデアは、概してつまらないものですし、実行する意味がありません。
課題があるからこそ、その先にあるメリットを享受できるのです。
会社経営においても様々な課題を抱えていると思いますが、課題から逃げることはできません。
課題と向き合わずに逃げている会社は、そのうち潰れてしまいます。
一方、課題と向き合い、乗り越えた会社は一段と成長することができます。
現在、直面している課題に向き合って適切に対処していますでしょうか。
いずれやってくる事業承継の準備はできていますでしょうか。