事業承継とヒト・モノ・カネ・情報
事業承継と経営資源の関係
経営に必要な資源として、ヒト・モノ・カネ・情報の4つが挙げられます。
ヒトとは、社員のことです。社員が働いているからこそ、会社経営は成り立つのです。
モノとは、製品や商品あるいは建物や機械などです。商品やサービスを生み出すための投資です。
カネとは、お金です。人件費や仕入など事業を行う上で資金は必要不可欠です。
情報とは、ノウハウや顧客データ、ブランドなど無形の資産です。
これらの経営資源を承継する際に注意すべき点を考えてみましょう。
ヒトの承継
経営者の承継
事業承継を行うと経営者(社長)が交代します。
この際、前社長をどのように処遇するかが一つの大きな課題です。
一般的には前社長が会長に就任するケースが多いようです。
しかし、これが常に正しいわけではなく、会社の状況によってより良い方法を選択するしかないと思います。
といいますのも、日本史で学んだ「院政」状態になるリスクがあるからです。
とりわけ創業者から後継者にバトンタッチする場合、創業者は従業員から絶大な支持を得ていますので、創業者が会長に就任すると、事業承継後も会長のご意向を気にするようになってしまいます。
そのため、社長職を譲った後も、結局は創業者である会長が実権を握っているケースも見受けられます。
会長にとっては大変つらいとは思いますが、個人的には会長は経営に対して口を出さない方が、後継者が意欲的に責任をもって経営に専念できると思います。
役員・幹部社員の承継
役員もどのように承継するか課題です。
役員は前社長の右腕となって、会社経営をサポートしてきました。
そのため、今後も後継者のサポートをしていただきたいのですが、前社長の経営方針を変えることに対して心理的な反発が生じてしまうと、社内の強力な抵抗勢力になってしまいます。
それを予防するためには、実際に経営者交代を行う数年前から当該役員には後継者の右腕となってもらうことが良いと考えます。
あるいは、前社長引退と併せて退任していただくことも場合によっては必要かと思います。
ただし、前社長と役員が同時に辞めてしまいますと、取引先との関係に大きな変化が生じますので、慎重な検討が必要です。
従業員の承継
ヒトの承継といいながら、従業員の話が最後になってしまいました。
といいますのも、従業員は経営陣の動きに大きな影響を受けるからです。
経営陣が盤石な体制であると従業員が支持すれば、後継者を中心とした新体制のもと、今後もその会社で働き続けるでしょう。
しかし、今後の行く末に不安を感じると、場合によっては自主退職してしまうかもしれません。
そこで、事業承継に際しては経営者が交代したから、突然、会社の方針が180度転換するのではなく、前経営者の時代から少しずつ準備を行い、従業員を慣らしていく必要があります。
また、後継者が中期経営計画等、目に見える形で会社の進む方向を明示し、従業員に理解してもらえるよう説明しなければなりません。
新規採用する人材はイチから育てないといけませんが、今いる従業員は会社のことを知っていますので、新人の何倍も会社の利益に貢献してくれるはずです。
そのような人材をきちんと引き留めて、今後もその会社で働きたいと思ってもらえるように後継者は会社経営に努めなければなりません。
他の経営資源の承継については別途、書きたいと思います。