富士フイルムの事業転換から学ぶ
富士フイルムが武田薬品工業の子会社を買収
富士フイルムホールディングスは武田薬品工業の子会社である和光純薬工業を買収すると発表しました。
この買収により富士フイルムは再生医療事業の収益化に大きく前進します。
富士フイルムは既に2008年に富山化学工業(医薬品等の製造販売)、2014年にジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(再生医療製品事業)、2015年にアメリカのセルラー社(iPS細胞由来分化細胞等の開発・製造・販売)と、立て続けに医療関連企業を買収しています。
自社にない技術を買収しながら医療医薬品事業に本格参入し、ナレッジを蓄積した後、着実に再生医療分野を強化しています。
また、武田薬品工業は買収資金を元に、重点疾患領域(がん、消化器系疾患、中枢神経系疾患)およびワクチンの研究開発に注力するとしています。
どちらの会社も今後の成長戦略を見据えてのM&Aと言えます。
ちなみに、この和光純薬工業は試薬、化成品及び臨床検査薬の製造・販売を行う会社です。
2016年3月期の連結売上高は79,391百万円、連結経常利益は7,849百万円を計上しています。
富士フイルムの事業転換
皆さんご存知のとおり、富士フイルムはかつて、写真フィルム事業が中心でした。
しかし、カメラ付ケータイやデジタルカメラの普及に伴い、急激に写真フィルムの需要は減退しました。
同業でライバル関係にあったアメリカのコダック社が2012年に事実上倒産したことは記憶に新しいと思います。
そのような厳しい経営環境の中、富士フイルムは2007年に機能性化粧品「アスタリフト」を発売してヘルスケア分野に参入しました。
しかし、実は、富士フイルムは1936年の「X線フィルム」の発売から今日に至るまで、デジタルX線画像診断や超音波画像診断など画像診断領域に関わっており、ヘルスケア分野と無縁というわけではありませんでした。
さらに、機能性化粧品分野については、写真分野で培われた技術が応用されています。
例えば、写真の色あせと肌のシミや老化の原因が共通しています。
また、写真フィルムの主原料が肌と同じコラーゲンで出来ているため、コラーゲンに関する技術や知見が蓄積しています。
このように既存事業で培ったノウハウと経営環境の変化を考慮して、ヘルスケア分野の拡大を徐々に進めていきました。
今回の買収は、そのヘルスケア事業の拡大を大きく進めるものと考えられます。
なお、2016年3月期の有価証券報告書によりますと、富士フイルムホールディングスの連結売上高は2,491,624百万円です。
そのうち、ヘルスケア分野を含んたインフォーメーション ソリューションセグメントは964,215百万円と、全体の38.7%も占めています。
ちなみに、写真フィルム事業を含んだイメージング ソリューションセグメントは353,287百万円と、14.2%となっています。
残りの売上高はオフィス用複写機などのドキュメント ソリューションセグメントが占めています。
歴史ある企業は事業転換しています
歴史ある企業を思い浮かべますと、事業転換をしていることが分かります。
例えば、トヨタは往年のガソリン車のみを製造しているのではなく、ハイブリッドカー、燃料電池車、電気自動車とたゆまぬ研究開発を続けています。
NTTも固定電話に固執するのではなく、携帯電話、インターネット事業と拡大しながら、現在ではグローバル・クラウドサービスなど海外進出を積極的に行っています。
中小企業は事業転換できない??
一方、単一事業の中小企業は事業転換できないまま苦しんでいます。
商圏の人口が高齢化・減少し、得意先も次々と廃業し、従業員も高齢化・退職し、もう打つ手がないと嘆いています。
このように考えてしまう前に、「なにかの固定観念に縛られていないか」と自問自答しては如何でしょうか。
商圏の人口が高齢化・減少しているのなら、商圏を広げたり、変更したりしても良いのではないでしょうか。
あるいは、高齢者向けの商品・サービスを充実・強化しても良いのではないでしょうか。
得意先が減少しているのを指をくわえて眺めるのではなく、今まで接点のなかった相手を得意先として開拓して良いのではないでしょうか。
そのためには、これまで培ってきたノウハウ・強みを改めて見直し、どのようにアピールすれば相手に伝わるかを入念に考える必要があります。
従業員が高齢化したり、退職したりして減少したのなら、働き方を見直しては如何でしょうか。
外注しても問題のない業務は積極的に外注し、自社でなければならない仕事に人材を集中するように白紙の状態から再構築すると、今まで不可能と思われたことができるようになります。
固定観念に縛られるな
固定観念が最適解であるとは、誰も言っていません。
今までやってきたから、何も疑わずに惰性で行ってきたこと、そんな固定観念は全て取っ払ってしまいましょう。
固定観念を無くした後に、自分の会社は「何を誰のためにどうやって提供するのか」を改めて考えましょう。
現状を嘆いている自分に気が付いたら、もしかしたら固定観念に縛られているかも?と一度、考えてみてください。