旭硝子のCMCバイオロジックス社買収から学ぶ
旭硝子がバイオ医薬品原薬の開発製造受託企業を買収
AGC旭硝子は、大手バイオ医薬品原薬の開発製造受託企業であるCMCバイロジックス社(以下、CMC社)を買収すると発表しました。
CMC社は、動物細胞と微生物を用いたバイオ医薬品を受託製造する会社です。
旭硝子と聞きますと、ガラスが頭に思い浮かび、医薬品はなかなかピンと来ません。
しかし、実は、1985年にバイオ事業を発足させ、2000年初めよりバイオ医薬品製造受託事業を開始していました。
また、旭硝子の中期経営計画においても、化学品の分野の成長戦略としてライフサイエンスの分野が明記されていました。
新たな成長の種を探す
衰退していく市場に居続けていたのでは、会社経営が行き詰ってしまうのが目に見えています。
そのため、どの企業も成長市場を常に探しています。
この企業行動をPPMを用いて考えると分かりやすいです。
既存事業はPPMでは「金のなる木」と言えます。
しかし、その「金のなる木」の市場成長率が低く、国内市場に限っては人口減少社会ですので、マイナス成長になるかもしれません。
そのままジリ貧になるわけにはいきませんので、新たな成長の種を求めます。
その成長の種が、旭硝子の場合、ヘルスケア、医療分野です。
2017年から、団塊の世代がいよいよ70歳になり始めます。
そのため、医療分野の拡大はますます進んでいくものと思われます。
このような市場成長率の高い分野に新たに参入すると、PPM上、最初は「問題児」に位置付けられます。
そこで、「問題児」から一刻も早く「花形」に移行するため、M&Aを行うなど、積極的に投資を行っていきます。
相次ぐ医療分野への参入
先日のブログで富士フイルムが武田薬品工業の子会社を買収した件に触れました。
それ以外にもキヤノンが東芝メディカルを買収したり、NECがAIを活用したがんワクチン開発の会社を設立したりと次々と医療分野に参入する企業のニュースが報じられています。
先ほど、申し上げたようにどの企業も成長市場を常に探しています。
従って、自分の会社だけが”掘り出し物の”、あるいは”穴場の”成長市場を見つけることはほとんどありません。
ヘルスケア・医療分野は多くの企業が成長市場と位置付けているため、上記のような新規参入が相次いでいます。
新規参入が相次ぎますと、既存企業からすると競争が激化して大変ですが、市場規模が拡大しますし、新たな技術開発も期待できる良い面もあります。
中小企業はどう動くか
それでは、製薬業界ではない、中小企業はこの競争をただ眺めているしかないのでしょうか。
ただ眺めるだけじゃ、もったいないですよね。
自社の持っている技術、ノウハウ、取引先など、様々なことを勘案して、何か関係しないか考えることが大事です。
例えば、錠剤やカプセルを包装するパッケージ、物流、ネット通販、飲みやすくするためのゼリー、飲み忘れを防ぐためのアプリ、薬局・ドラッグストアの出店に伴う建設工事や販売促進など薬に関連することは色々考えることができます。
医療分野ということは、病院や薬のお世話にならない方がより幸せですから、健康を維持するためのフィットネスや生活習慣病を予防するためのダイエットなどの分野も当然、成長して行きます。
既に、フィットネス市場やダイエットの市場なども激烈な競争が行われています。
もちろん、競争が激しいから参入しないのも選択の一つです。
自社の強みもないのに、次から次へと成長市場に安易に参入することはお勧めしません。
しかし、成長市場に参入しないときに、現在の市場(その市場が成長するのか衰退するのか分かりませんが…)に居続ける重大な意思決定をしたと意識しなければなりません。
何か新しいことを始めるときには、ものすごく慎重に検討するのですが、一度、始めてしまいますと、継続する意思決定のハードルはかなり低くなってしまいます。
でも、それって、公平に比較検討できていませんよね。
ホントに現在の市場に居続けることが、自社にとって最適なのか否か、考える時が必要なのではないでしょうか。
少なくとも、皆さんが知っているような大企業は成長市場に参入する動きを見せています。