後継者がいないからM&Aでいいのか?
後継者不足から中小企業のM&Aに注目
一昔前にはM&Aといえばハゲタカファンドとか敵対的TOBなど、会社を乗っ取られる印象が強かったです。
しかし、近年は、会社の成長戦略の一環としてM&Aという選択肢もあるという認識が広まってきました。
そのような中、後継者不足に悩む中小企業の解決策の一つとしてM&Aが注目されています。
M&Aのメリットは、何と言っても会社の事業を継続できることです。
後継者不在を理由として廃業してしまいますと、資産をたたき売りしてでも負債を返済しなければなりません。
もし、現金化した資産で負債を完済できなければ、債権者に多大な迷惑をかけてしまいます。
これまで長年にわたって事業を営んできたのに、最後のたたみ方が上手くいかないと、悪い印象だけが残ってしまいます。
また、従業員や役員への会社都合による退職金の支払いが必要ですし、再就職の支援もしなければなりません。
廃業によって起きるこのような事象はM&Aによって回避することができます。
また、金融機関からの借入金に対する連帯保証人もなくなりますし、現金化の難しい自社株も売却することができます。
M&Aの対象となる会社
どんな会社でもM&Aの対象となるわけではありません。
それは、皆さんが買収する側の立場に立てば容易に想像がつきます。
業績の良い会社と、業績の悪い会社のどちらを買収したいでしょうか。
資金の潤沢な会社と、過剰債務の会社のどちらを買収したいでしょうか。
成長している会社と、衰退している会社のどちらを買収したいでしょうか。
販路を持っている会社と、販路の乏しい会社のどちらを買収したいでしょうか。
技術を持っている会社と、技術の持っていない会社のどちらを買収したいでしょうか。
人材の育っている会社と、大量退職を控えている会社のどちらを買収したいでしょうか。
一つ一つを考えてみますと、経営改善しないことには、M&Aしたい会社にはならないことが分かります。
中小企業の強みの源泉は経営者
中小企業の経営者は皆、それぞれ個性的です。
その個性を発揮して、会社を起ち上げ、成長させ、今日に至っています。
つまり、会社の成長の原動力、強みの源泉は経営者自身なのです。
しかし、その会社に後継者がいないとなりますと、経営者の引退に伴い頭数が一つ減少するだけではなく、会社の強みそのものが失われることを意味します。
先ほど、買収したい会社とは何なのか列挙してみました。
業績の良い会社も、資金の潤沢な会社も、成長している会社も、販路を持っている会社も、技術を持っている会社も、人材の育っている会社も、全て、経営者個人による功績が大きいのではないでしょうか。
そうしますと、M&Aをする買収側からしますと、会社と経営者をセットにして買収しないと会社の強みが発揮されません。
あれ、なんかおかしいですよね。
後継者不在で事業承継できないから、M&Aで会社を売却する、つまり、経営者自身は引退する前提でした。
じゃあ、経営者が引退することを前提に会社を評価しなおしますと、どうでしょうか。
会社の強みが強みでなくなってしまうということはないでしょうか。
後継者を育成することはM&Aにもメリット
それでは、経営者の強みを一部でも後継者が引き継いでいたらどうでしょうか。
会社を買収する側としたら有難いですよね。
会社買収後も、会社の強みが失われることなく、引き続き、強みが発揮されるのですから。
どの会社にも会社を経営する人材が不足しています。
そのため、会社のことを熟知し、その業界にも精通し、社内を統率できる人材は大変貴重です。
このように考えますと、後継者の有無ってM&Aにおいても重要なのではないでしょうか。
後継者がいないからM&Aしたいと考えても、会社を買収する側としても、果たして買収後にメリットがあるのかちょっと疑問ですよね。
そして、後継者のいない会社は社内の教育体制が整っていないことが多いため、人材が育っていません。
M&Aを目的として会社を魅力的にするためにも、後継者育成は大事なのではないでしょうか。