データは大事というけれど
データは大事
データは大事だと思います。
ここでいう、データとは会社経営に関する様々な情報のことを指しています。
現在ほど、データが整備されていなかった高度経済成長期においては、作れば売れるような状況であるため、あまりデータは重視されなかったように感じます。
しかし、売上が落ち込んだり、赤字を垂れ流したりするような状況になると、これまでの経験則が活かされませんので、どこに問題があるのか、その原因を探すためにデータを重視する傾向にあります。
もちろん、データを分析することにより、売上減少の原因や赤字の原因が見つかる可能性はあります。
ただし、そのデータは正確であること、適時に入手可能であること、分析しやすいことといった要件を満たさないと、適切な判断を導くツールとはなり得ません。
データは大事なのですが、大事なデータとは使える・有益なデータに限られます。
信用できないデータ、入手できないデータ、分析できないデータは何の意味もありません。
データは万能ではない
繰り返しになりますが、データは大事と思います。
しかし、会社経営に関することを遍くデータ化できるわけではありません。
例えば、従業員のモチベーション、ノウハウ、顧客の潜在的なニーズなどは、数値化、文書化しようとしても、適切に表現できているとはいえません。
とりわけ、従業員満足度や顧客満足度などの調査・アンケートなどには、本音と建前の問題もあるため、回答内容をそのまま解釈して良いのかどうか難しい面もあります。
そのため、データ化しやすいものが集計され、意思決定に活用されやすくなります。
しかし、データ化しやすいものが重要で、データ化しにくいものが重要でないということではありません。
そのため、データ化された情報を活用しながら、データ化しにくいものを補完することが必要です。
データ化されているのに活用が不十分?
全ての会社で作成されるデータの一つに決算書があります。
決算書には、決算日時点の財政状態を表す貸借対照表と決算期間の経営成績を表す損益計算書が含まれます。
この決算書は、会社に関わる経済事象や取引をできるだけ金銭に換算して、数字として表現されます。
「できるだけ」といったのは、決算書には様々な見積もりの要素が含まれることと、全ての経済事象や取引を数字で表現することはできないからです。
細かな会計上の説明は割愛しますが、決算書一つで全てを網羅することはできませんが、かなりの部分を数字で表現することが出来ていることは間違いありません。
この決算書をどのように活用するかで、決算書自体の価値が大きく異なります。
決算書で多くの部分が表現されていると考えれば、決算書で表現されない、所謂、非財務データを補うことで、経営判断に活用することができます。
一方、決算書では表現できない項目など、欠けている所に着目するならば、決算書は役に立たない、使えないと感じるかもしれません。
私としては、決算書から得られる情報と得られない情報を理解したうえで、徹底的に活用すべきと考えます。
決算書は中小企業において納税目的であったとしても、必ず作成するものですので、納税計算だけで終えてしまうのは非常にもったいないです。
3つの要件を満たすこと
先ほど、データは正確であること、適時に入手可能であること、分析しやすいことが必要と述べました。
決算書においても、この3要件を満たす必要があります。
まず、正確であること。
極端な例として、金融機関向けに粉飾決算したり、脱税目的で逆粉飾決算したりすることで、経営者自身、会社の状況を正確につかめなくなります。
適切な決算書がないと、誰一人として会社の財政状態や経営成績を適切につかめなくなります。
このような極端な例でないとしても、誤った情報は誤った判断を導いてしまいますので、正確性は重要です。
次に、適時に入手可能であることとは、正確な情報を得るために何カ月も時間を要してしまうのでは、ビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。
法定の決算書は一年に一回ですが、経営判断に使う情報としては一年に一回の情報のみではタイムリーではないですよね。
そのため、経営者が情報を欲しい時に、直近の情報が手に入ること、例えば、月次の決算書や管理会計を整備することで適時性も満たすことが出来ます。
さらに、分析しやすい形でない情報は、結局、誰にも使ってもらえません。
法定の決算書は、会計の専門家にとっては読みやすいものであり、他社と比較しやすいものになっています。
しかしながら、経営者や従業員の日々の仕事がどの勘定科目にどの程度、影響を及ぼしているのかイメージしづらいものとなっています。
そこで、セグメント会計や部門別会計、バランスト・スコアカードなど、様々な手法を活用して、各々の仕事と関連付けられるようにブレイクダウンする必要があります。
また、情報は継続的に収集しないことには分析しようもありません。
一度限りの情報ではなく、複数年にわたって収集した情報だからこそ、過年度推移を分析することが出来ますし、過年度の意思決定がどのように情報に影響を及ぼしたかも把握することが出来ます。
あの時の意思決定が、このような数字に反映されていることを感じることが大事です。
情報は過去のものでしかありませんが、その過去の情報をもとに、将来どうするかを考えるしかありません。
データがすべてではありませんが、不確実な将来に対して、既に結果の出ている過去を活用しない手はありません。