【税制改正2021】結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について
適用期間の2年延長
結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について、適用期限を2023年3月31日まで2年間延長することが決まりました。
ただ、適用期限を延長しただけでなく、節税利用目的の防止と、民法改正と整合を取るための修正が行われました。
孫やひ孫が受贈者なら、2割加算
そもそも、通常の相続において、被相続人の配偶者及び一親等の血族以外の人が相続した場合は、相続税の計算において相続税額の2割加算が行われます。
従前の結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置において上記のような相続税の課税対象となる際、相続税額の2割加算の対象外とされていました。
しかしながら、今般の税制改正において、受贈者が孫・ひ孫の場合、全ての贈与に係る残額が相続税の対象となり、相続税額の2割加算が適用されます。
つまり、通常の相続税を課して、過度な節税対策をさせないためですね。
適用時期は2021年4月1日から2023年3月31日です。
孫などの年齢要件引き下げ
民法改正による成人年齢の引下げに伴い、受贈者の年齢要件の下限を20歳以上から18 歳以上に引き下げられます。
民法改正時期と連動して、本改正は2022年4月1日から適用されます。
税制改正が行われた背景
そもそも、なぜ結婚・子育て資金の非課税制度は創設されたのでしょうか?
ご存知のように我が国は人口減少傾向にあり、その原因は少子化です。
少子化とセットで語られる高齢化は長生きを意味するので、人口減少の原因とはいえないかなと思います。
少子化対策の一環として、税制の観点で何ができるか、どのような改正を行ったら、国民が子供を持ちたいと思い、実際に子供を持ってもらえるのか、当局は真剣に考えたのでしょう。
所得税では配偶者控除や扶養控除など、所得控除がメインです。
資産税といわれる相続税や贈与税では、少子化対策につながりそうな税制が以前は見当たらなかった気がします。
そこで、結婚・子育てがしやすくなるように、贈与税の非課税措置を捻り出したのでしょう。
しかし、結婚適齢期といわれる世代が結婚しないのは、そもそも出会いがない、出会いがあっても非正規社員等のため将来の人生設計ができないといったことが原因なのではないでしょうか。
出会いについて、税制の観点でどうこうするのは正直難しいです。
税制よりも、徴収した税金を使って、自治体が街コンの補助金を出すなり、AIを活用したマッチングに補助金を出すなどした方が有効活用している気がします。
また、非正規社員等については、正社員への就労支援など、厚生労働省の管轄になるので、税制としてどうこうしにくいのだと思います。
さらに、子育てについても税制の観点では難しいですね。
一括贈与の非課税措置があるからといって、子供を育てたいとはならないですよね。
そのため、「結婚・子育て資金」という名前はあくまで名目上のものであり、真の狙いは高齢者の保有している金融資産を何とかして費消してもらって、経済を活性化したいということだと思います。
その真の狙いがあるにしても、結局は、裕福な人が自分の子孫に資産を移転するため、所得格差が世代を超えて継承されることになります。
そして、裕福でない人は、そもそも結婚を諦めたり、子供を持つことを諦めたりするのではないでしょうか。
真の狙いの意図は分かりますが、税制として少子化対策をするのならば、もっとダイレクトに結婚・子育て世代に伝わるものを考えてほしいですね。
事業承継対策・相続対策における活用の仕方
多額の相続税納税が予見されるオーナー経営者は、相続財産を減らすために本制度を活用することは有用です。
また、法定相続人の中に後継者と事業を引き継がない者(非後継者)がいる場合、後継者に自社株や事業用資産を集中的に相続させるため、非後継者に不公平感が生じやすいです。
そのような時に本制度は非後継者に結婚や子育てといったライフイベントを迎えるタイミングだったら、その非後継者に一括贈与することで、後継者と非後継者の間に生じる不公平感を緩和することができます。
注意点は、都合良く、法定相続人の中に、これから結婚を予定している人、出産を予定している人などタイムリーな人がいないと適用できない点です。
結婚や出産というライフイベントは、税制を活用するためにタイミングを合わせるようなものではないですからね。