後継者の本音 届いていますか?
事業承継や社長交代の支援の現場で、現社長と後継者が同席すると、打合せの大半は現社長の話となってしまいます。後継者は同席して、時折、頷くだけ。これから、会社を引っ張っていくはずなのに、後継者の意見を求められない。このような状況に陥ってしまう原因と解決法を本記事で解説します。
後継者が本音を言いにくい主な原因
会社は風通しの良い職場なのか?
事業承継に関する情報のアンバランス
後継者の意見が通らない
後継者の本音を引き出す方法
話を最後まで聞く
「いや、でも、しかし」を使わない
論破せずに宿題を出して、議論のキャッチボールをする
第三者を交える
後継者が本音を言いにくい主な原因
多くの中小企業を支援してきた中で、以下のような要因により、後継者は本音を言いにくくなっています。
会社は風通しの良い職場なのか?
事業承継や社長交代を行う現社長は、大抵の場合、自社を風通しの良い職場と思っています。
会社は経営者にとって居心地の良い環境になっていくため、自然と風通しの良い職場だと自己評価しがちです。
しかし、風通しの良さは決算書の利益のように、はっきりと数字で評価できるものではなく、各人の主観的な評価とならざるを得ません。
そのため、経営者にとって風通しが良くても、後継者にとって風通しの良い、すなわち、本音が言いやすいとは限らないのです。
事業承継に関する情報のアンバランス
仮に、風通しの良い職場で、後継者が本音を語れる会社だとします。
それでも、後継者は事業承継・社長交代に関して、本音を語りにくいものです。
なぜなら、事業承継・社長交代に関する情報量が現社長と後継者では圧倒的な差があるためです。
そもそも、事業を引き継いでもらう現社長と、これから事業を引き継ぐ後継者では、会社経営経験の有無という違いがあります。
加えて、現社長には顧問税理士や金融機関等、相続対策や事業承継対策などのブレーンが数多く存在し、今日まで意識的に勉強しています。
一方、後継者は現場で日々忙しく働く傍ら、経営者としての勉強を始めたばかりなので、相続対策や事業承継対策の話まで勉強する余裕はありません。
後継者の意見が通らない
社内会議の場で、現社長が後継者に意見を求めることはあっても、結局、現社長の意見ばかり通っていたら、後継者はどう思うでしょうか。
後継者が会社のためを思って、自分なりに考えて意見しても、どうせ採用されないのなら、意見するのを止めよう。
このように思っても不思議ではありません。
つまり、現社長が後継者に対してイエスマンであることを求めたら、後継者は本音を隠さざるを得ません。
後継者すら本音を言えない職場は、社長が裸の王様になる危険性が極めて高いです。
後継者の本音を引き出す方法
事業承継後・社長交代後、会社を経営するのは後継者です。そのため、後継者の本音を引き出さないと、事業承継・社長交代は成功しません。
話を最後まで聞く
後継者の意見を聞く時、話の最後まで聞くことは、基本のキですが、非常に大事です。
現社長としては話を最後まで聞かなくても、結論が分かるなどして、途中で遮りたいかもしれません。
しかし、話を途中で遮られてしまうと、今後、現社長に話を聞いてほしいとすら思わなくなってしまいます。
このようにコミュニケーションが疎かになってしまうと、経営方針を引き継ぐことができません。
そのため、後継者の話を最後まで聞くことで事業承継・社長交代は進んでいきます。
また、会議等の場で社長が話す前に、後継者が自分の意見を述べる場面を用意することも大事です。
「いや、でも、しかし」を使わない
どんなに後継者の話を聞いても、社長が使ってはいけない言葉あります。
それは「いや、でも、しかし」です。
コミュニケーションを取っているとき、第一声が「いや、でも、しかし」から始まると、これまでの意見・考えが全否定されたことになります。
「いや、でも、しかし」という一言によって、後継者は自分の考えが間違っていて、現社長の考えが正しいと半ば強制的に思わざるを得ず、本音を引っ込めざるを得ません。
例え、後継者の意見が間違っていたとしても、その意見を一度、受け止めてあげる必要があります。
「自分も社長一年目の時は、そんな風に思っていたこともあったよ」など、ワンクッション設けることで、後継者は自分の意見を聞いてくれたと思えるのです。
論破せずに宿題を出して、議論のキャッチボールをする
現社長と後継者で意見が対立した時、経験の差などから、現社長は論破しがちです。
あるいは論理的でなくても、社長権限で突破してしまうかもしれません。
しかし、論破したところで、論破された方は納得できなかったり、議論に負けた悔しさからモチベーションが低下したりしてしまいます。
そこで、論破するのではなく、それぞれの案のメリット・デメリットを比較させるような宿題を出します。
論破は一方通行ですが、宿題を出すことで議論のキャッチボールをすることができます。
このような比較を通じて、現社長と後継者のどちらの案が良いかではなく、会社としてどちらが最適かという観点で議論すると、コミュニケーションは深まっていきます。
第三者を交える
後継者の本音を引き出す最も効果的な方法は、第三者を交えることです。
できれば、その第三者は現社長や後継者の親族ではなく、会社経営に詳しい専門家である方が望ましいです。
その第三者に会議や話し合いの司会進行をしてもらいます。
すると、現社長や後継者はその第三者に向かって、自分の意見や考えを伝えようとしますので、当事者同士で話し合うよりも、冷静で論理的かつ客観的に話すようになります。
この効果は絶大で、これまで会社を継ぐ意思を曖昧にしていた後継者候補が明確に会社を継ぐ意思と覚悟を決めたことにより、事業承継・社長交代が順調にできた会社もあります。
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