役員報酬の減額理由として、業績の著しい悪化が不可避と認められるケース
設例
当社(年1回3月決算)は、期中において売上の大変を占める得意先が倒産してしまいました。そのため、当社の売上は激減することが避けられない状況となりました。
そこで、役員給与の減額を含む経営改善計画を策定し、今月から役員給与を減額する旨を取締役会で決議しました。
ところで、年度中途で役員給与を減額した場合にその損金算入が認められるためには、その改訂が業績悪化改定事由(経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由)によることが必要です。
上記のように、現状ではまだ売上が減少しておらず、数値的指標が悪化しているとまでは言えない場合でも業績悪化改定事由に該当するのでしょうか。
業績悪化改定事由とは
業績悪化改定事由とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいます。
通常は売上や経常利益などの会社経営上の数値的指標が既に悪化している場合が多いものと思われます。
設例のように、現状では数値的指標が悪化しているとまでは言えないものの、役員給与の減額などの経営改善策を講じなければ、客観的な状況から今後著しく悪化することが不可避と認められる場合には、業績悪化改定事由に該当するものと考えられます。
また、今後著しく悪化することが不可避と認められる場合であって、これらの経営改善策を講じたことにより、結果として著しく悪化することを予防的に回避できたとしても、業績悪化改定事由に該当するものと考えられます。
設例の得意先の喪失以外にも、主力製品に瑕疵があることが判明して、今後、多額の損害賠償金やリコール費用の支出が避けられない場合なども業績悪化改定事由に該当するものと考えられます。
留意点
設例のような場合には、役員給与を減額するに当たり、以下のような項目を説明できるようにしておく必要があります。
- 会社経営上の数値的指標の著しい悪化が不可避と判断される客観的な状況としてどのような事情があったのか
- 経営改善策を講じなかった場合のこれらの指摘を改善するために具体的にどのような計画を策定したのか