譲渡制限株式とは?
譲渡制限株式
株式の譲渡は原則として自由です。しかし、会社が株式の譲渡を自由に認めますと、以下のようなリスクがあります。
- 会社が買収されてしまうリスク
- 不特定多数の第三者が株主になるリスク
- 経営意思決定の妨げになるリスク
上記のリスクを防ぐため、譲渡による株式の取得について取締役会等の承認を要するように定めることができます。これを譲渡制限株式といいます。多くの中小企業では会社が発行する全部の株式の内容として譲渡制限が定められています。
なお、あなたの会社の株式に譲渡制限があるかどうかは、定款又は履歴事項全部証明書(登記簿謄本)に「当会社の株式の譲渡には取締役会の承認が必要」といった記載の有無を確認してください。
株式の譲渡制限を設置するには
株式に譲渡制限を課す場合は、株主総会の特殊決議により定款を変更します。また、譲渡制限を外す場合は株主総会の特別決議により定款を変更します。それぞれの決議要件は以下のとおりです。
- 特殊決議:議決権を行使できる株主の半数以上の株主が出席して、出席株主の議決権の2/3以上の賛成が必要
- 特別決議:総議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の2/3以上の賛成が必要
なお、株式の譲渡制限の範囲に相続による株式の移転や合併及び会社分割による移転は含まれません。
譲渡承認機関
譲渡制限株式の譲渡承認請求は譲渡しようとする株主(株主 甲)でも株式取得者(第三者 乙)でも行うことができます。
株式譲渡を承認する機関は、取締役会非設置会社は株主総会、取締役会設置会社は取締役会が承認することが原則です。
譲渡承認の時間的制約
株式を取得しようとする者が会社にとって好ましくない者である場合、譲渡承認を請求された日から2週間以内にその株式の譲渡を認めない旨を株主又は株式取得者に通知します。仮に、2週間以内に通知しなければ、譲渡承認があったものとみなされてしまいますので注意が必要です。
また、その通知の日から40日以内に株式会社又は指定買取人の通知をしなかった場合にも、譲渡の承認があったものとみなされてしまいます。
このように時間の経過に伴い自動的に承認されてしまいますので、注意が必要です。
なお、承認請求は口頭でもできますが、「言った言わない」でトラブルが起きるのを防止するため、必ず書面で承認請求を行うよう定款に定めておくことをお勧めします。
株主間の譲渡
株式の譲渡制限は経営支配権の安定化が目的ですので、株主間の譲渡までは制限する必要がない場合もあります。そこで、株主間の譲渡については譲渡承認があったものとみなす旨の定款の定めを予めしておくことも有効です。
ただし、株主の中にオーナー経営者と意見対立する者がいる場合は、その意見対立する株主の比率が高くなる危険がありますので、注意が必要です。