資本的支出と修繕費の区分とは?
資本的支出と修繕費の区分
資本的支出とは、固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、またはその耐久性を増すこととなると認められる支出です。
修繕費とは、修理・改良のための支出であり、当該固定資産の価値を維持・復元するために支出されるものです。
修繕費は資産価値を高める効果はないため、費用として処理されますが、資本的支出は当該固定資産の帳簿価額に加算され、取得原価を構成することになります。
詳細は後述しますが、区分判定のフローチャートは以下のとおりです。
資本的支出の範囲及び例示
資本的支出は有形固定資産の価値を増加させる支出であるため、資産価値の増加額を資本的支出として処理します。
資本的支出を算定する計算式は以下のとおりです。
法人税法上、以下のような支出は原則として資本的支出に該当するとされています。
- 建物の避難階段の取付け等物理的に付加した部分に係る費用の額
- 用途変更のための模様替え等改造または改装に直接要した費用の額
- 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取替えた場合の取替費用のうち、通常の取替えに要する費用の額を超える部分の金額
修繕費の範囲及び例示
修繕費は固定資産の通常の維持管理費用、又は災害等に対する原状回復費用などです。
法人税法上、以下に掲げるような金額が修繕費に該当します。
- 建物の移えい又は解体移築をした場合におけるその移えい又は移築に要した費用の額
- 機械装置の移設に要した費用の額
- 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛に要した費用の額
- 建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の侵害を受けることとなったために行う床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額
- 現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利等を補充するために要した費用の額
少額又は周期の短い費用の損金算入
一つの修理や改良等のために支出した費用が次のいずれかに該当する場合には、修繕費として費用処理することができます。
- 修理、改良等のために要した費用の額が20万円に満たない場合
- 修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合
一つの修理や改良等のために支出した費用が資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない場合に、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として費用処理することが認められています。
- その金額が60万円に満たない場合
- その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
資本的支出と修繕費の区分の特例
一つの修理や改良等のために支出した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、継続適用を条件として、その金額の30%相当額とその固定資産の前期末取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする処理が認められます。
災害の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例
災害により被害を受けた固定資産について支出した次に掲げる費用に係る資本的支出と修繕費の区分については、上述によらず、それぞれ次のとおりとなります。
- 被災資産に関する原状回復費用は、修繕費に該当します。
- 被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用について、修繕費として損金経理できます。
- 被災資産について支出した費用のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでないものがある場合において、その金額の30%相当額を修繕費として損金経理し、残額を資本的支出とする処理できます。