ハーズバーグの2要因理論とは?
ハーズバーグの2要因理論
ハーズバーグの2要因理論とは、職務満足および職務不満足を引き起こす要因に関する理論です。これは職務に対して満足する要因(動機づけ要因)と、職務に対して不満をもたらす要因(衛生要因)の2つがあることを明らかにしました。
注目すべきは職務満足の反対が職務不満足でない点です。
そのため、職務に満足してもらおうと、どれだけ職務不満足の解消に努めても職務不満足でない状態になるだけで、決して職務満足には至らないのです。
また、動機づけ要因は端的に言うと仕事にやりがいを感じているため、長期的な効果を持ちます。
しかし、衛生要因は短期間の効果しかないため、ボーナスをもらったとしても、来年も再来年もやる気を持ってくれるとは限りません。
動機づけ要因
動機づけ要因はマズローの欲求5段階説でいう「自己実現の欲求」「尊重の欲求」及び「所属と愛の欲求」の一部に当たります。
- 仕事の達成感
ノルマのように会社から一方的に押し付けられた高い目標では、強制的にやらされていると感じてしまいます。会社の目標に社員が共感できないと社員のモチベーションは上がりません。一方、低すぎる目標では得られる達成感は小さいです。 - 周囲からの承認
目標が高すぎると達成も困難となるため、周囲から承認される機会が少なくなってしまいます。適度な目標設定が肝要です。 - 仕事そのものに対する興味
自分の興味のあることが仕事であれば、自ら進んで仕事をするでしょう。イヤイヤ仕事をするより、喜んで仕事をする方が良い成果につながります。 - 与えられた責任と権限
経験を積むごとに上司から任せられる仕事の責任と権限が増えていき、裁量の幅が広くなります。プレッシャーもありますが、その分、遣り甲斐があります。 - 昇進
周囲からの承認と与えられた責任と権限が得られる一つの例です。 - 成長
仕事を通じて成長できていることを感じることがモチベーションアップにつながります。成長できていることを実感しやすいように周囲から承認を受けることが必要です。また、資格取得や社内検定、社内表彰などを活用することも有効と考えます。
動機づけ要因を満たすためには
動機づけ要因を満たすためには、まず、従業員のできることを増やす・広げるために教育訓練が欠かせません。
スキルアップしたうえで後述します職務充実を行います。
衛生要因
衛生要因はマズローの欲求5段階説でいう「生理的欲求」「安全の欲求」及び「所属と愛の欲求」の一部に当たります。
衛生要因は満たされないと、職務不満足を引き起こしてしまいます。
- 会社の方針
経営理念や経営ビジョンが明確でないと、何を目的として仕事しているのかわかりません。目的のない仕事にモチベーションは上がりません。 - 上司の監督
上司の監督が会社の方針と沿っているかどうか重要です。上司の個人的な感情ではなく、会社の方針として経営ビジョンに向かうための指導や評価でなければ、組織として活動している意味がありません。 - 賃金
業務内容に見合ったものでなければなりません。責任と権限が大きいのに低賃金であると、モチベーションは下がってしまいます。 - 職場での人間関係
組織として仕事をする以上、お互いに協力しなければなりません。一人ではできないことが組織でできるようにするためには、お互いを尊重し、補完しあうことが必要です。 - 労働条件・作業環境
サービス残業や休日出勤を暗に強制するような企業風土は、労働者にとって労働力をただ搾取されている感じを受けます。働かされる職場ではなく、労働者が自ら働きたい職場となるように日常的にコミュニケーションをとり、現場の改善に努める必要があります。
衛生要因を満たすためには
まずは従業員が何に不満を抱いているかを把握する必要があります。
そして、経営者は衛生要因を満たしても従業員が職務に満足することはないことを心得たうえで、取り組まなければなりません。
つまり、労働条件を良くしたから、給料を増額したからもっと働けというような下心があったら、それは容易に見抜かれてしまいます。
衛生要因は従業員の不満足な状態から回避したい欲求なので、不満を解消することに注力します。
最後に解消策はシンプルに行い、解消したことを従業員に対して主張しないことです。
職務充実(job enrichment)
職務充実は、動機づけ要因の満足度を上げるために仕事自体を改善させることです。
具体的には、仕事に計画、準備、統制といった内容を加え、責任や権限の範囲を拡大して、難易度の高い責任のある仕事に挑戦させることで仕事そのものに遣り甲斐を感じさせようとする方法です。
単純に仕事量を増やして従業員への負担を重くすることではありません。
職務充実の方法
①費用対効果を考慮して、職務の中で動機づけ要因を満たす可能性のあるもの選びます
②ブレーンストーミングを行い、職務充実につながるものをリストアップします。
③そのリストの中から衛生要因に関するものを消去します。
④また、そのリストの中から具体性に乏しいものも消去します。
⑤さらに、そのリストの中から単純に仕事量を増やすような類のものも消去します。
このような手続きに従い作成したリストに基づき、職務充実を行うことで従業員がどんな反応を示すか、試行錯誤を繰り返します。
ただし、衛生要因が不足している状況でどんなに動機づけ要因のみを改善させてもモチベーションは上がりません。
劣悪な作業条件で低賃金で訓練も施されていないのに、難易度の高い仕事の責任者に抜擢されても無理ですよね。
2要因のバランスを考慮する必要があります。